ホテルシェレナの歴史や阪神淡路大震災での被害、耐震構造、建物状況調査について

ホテルシェレナ 復興記録―阪神大震災を経て―

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第1章 総 括






3 建築・設備の解説および状況

建築、設備全般に、経年劣化以上に永年にわたって建物を使用していないとこによる不具合が多く見られる。1995 年の阪神淡路大震災による多大な被害を受けた箇所の補強・復旧工事が行われている。ホテルとして再開するためには、建築では、外・内装の全面的な更新が必要であり、設備も機器を中心に大部分の更新が必要である。

3.1 建築

3.1.1 敷地・外構
玄関エントランスは現在閉館中のため仮囲いで閉鎖されている。
北・東面角犬走りと建物取り合いの巾木部分に軽微な沈下により浮き・損傷が見られる。
竣工以来、集中豪雨等による浸水災害はなかった旨、管理者とのインタビューにて確認している。

3.1.2 構造体
外壁において、平成19 年2 月14 日確認時に各階北側の客室開口間周辺の壁を中心にコンクリートが破壊され内部鉄筋の露出していた箇所は、エポキシ樹脂注入と樹脂モルタル充填にて修復されており、破壊の顕著な箇所は既存壁を撤去しALC版にて壁面を修復されている。機械室などの目視できる柱・梁などの躯体について、構造上支障をきたすような大きな問題は見られない。ただし、再度建物使用にあたっては、柱・梁などは仕上げを取り除いた上で、全館の詳細調査を推奨する。
また、インタビューでは震災以前の作業と確認しているが、構造体のコンクリートをハツリとって鉄筋を露出させていた部分は、樹脂モルタル充填にて復旧が完了している。

3.1.3 外装
外壁の北面コンクリートの上吹付タイル仕上げ面は、地震によりコンクリートが破壊され壁面を貫通したクラック部から内部鉄筋が露出し発錆していた箇所は、エポキシ樹脂注入と樹脂モルタルにて修復されており、破壊の顕著な箇所は既存壁を撤去し、ALC版取付けにて壁面を修復されている。道路に面する南・西面の外壁には、クラック修繕跡と大気汚染や風雨の吹込み等による雨垂れ・塵埃の附着で汚損・変褪色が見られる。吹抜け部周囲の壁面は調査時には仮設足場が設置されており修繕工事中である。各階開放廊下のコンクリート手摺内部側にも、クラックと壁面に雨垂れ汚染が目立ち変褪色が見られる。
屋上周辺の設備機器目隠し壁の石状吹付け面に、クラックと剥離・変褪色が顕著に見られ、又、アルキャスト取付け金物や目隠し取付け支柱と鋼製建具・鋼製手摺に発錆・腐食・変褪色が見られる。
バルコニーの塗り床面に一部クラックが見られる。
エントランス天井塗装仕上げ面に染み跡と、円形柱の照明器具金物に発錆・変褪色が見られる。
外壁北・西面1~2 階部分の御影石貼り部の一部に割れが、石状厚吹き仕上げ面に大気汚染や塵埃の附着による汚損が見られる。
南側屋外鉄骨避難階段や東側外部階段の鋼製手摺、北面2階の開放廊下手摺のしのび返しに発錆・変褪色が見られる。アルミ製軽合金製建具については、一部に変形で開閉不可能であった箇所は修繕が完了しているが、塗装更新が未完となっている。1 階北面のステンレス製建具・アルミサッシュには発錆・変褪色が顕著に見られ、建具廻りに充填されているシーリングに硬化・汚損が見られる。1 階廻りなどの鋼製建具には発錆と腐食・変褪色が見られる。

3.1.4 屋上
塔屋・屋上ともアスファルト防水の上押えコンクリート伸縮目地切り仕上げである。表層に軽微なクラックと荒れ・汚損があり、排水側溝にコケと雑草の繁茂がルーフドレン周辺に塵埃の堆積による目詰まりが見られる。部分的に不陸箇所で水溜りが見られる。立ち上がり部押えのアスファルト露出防水に浮き・捲れ・汚損が見られる。パラペット顎部にコンクリート欠損が見られる。吹き抜け部3階の屋上トップライトガラス押えのシーリングに劣化が見られる。以前ルーフドレンの目詰まりにより、下階(1・2 階ロビー部分)への漏水があった旨インタビューにて確認している。

3.1.5 内装
エレベーター機械室の天井に漏水によるものと推定される染み跡が見られる。
塔屋前室内に鳩が侵入し糞害が顕著に見られるため、養生柵の取付けを推奨する。
階段室の段裏のクラック部は樹脂モルタルにて修復されている。壁面の塗装更新は未着工である。床のビニルタイルに剥離と磨耗が見られる。 各階客室内については、震災の影響によって壁面のコンクリートが各所で破壊されていた部分は修膳が完了し、石膏ボードにて修復されている。壁や天井のクロスの剥離と汚損部の貼り替え、および塗装更新は未着工である。浴室の壁石に割れなどが一部に見られる。各階客室や廊下部の床カーペットは撤去されており、1・2 階ロビーなどの漏水があった部分などの床カーペットも撤去された状態となっている。
地階については天井・壁・床ともスケルトン状態となっている。


3.2 設備

3.2.1 電気設備

【1】 受変電
本館B2F にある受電設備より西館用変圧設備に分岐送電され、変圧された電力が西館に供給されていた。しかし、本館取り壊しの為、年内を目処に新たに敷地西側より引込を行い、開放型高圧受変電設備を地下に設置予定である旨、インタビューにより確認された。但し、工事期間中の現在は非常用EVと一部の照明のみが使用出来るように仮設の低圧引込にて受電されている。
【2】非常電源
西館には機器は設置されておらず、取り壊された本館に非常用発電機と非常用蓄電池が設置され、供給していた。しかし、現在は撤去されており、新たに非常用発電機設備を西館内に設置予定である。蓄電池設備においては現在のところ設置予定はない。
【3】 強電
幹線、動力操作盤、電灯分電盤、電灯コンセント、照明器具等が設置されている。現在、幹線はEV用と一部の照明用のみを活かしており、その他は電気の供給を止めている。また、不法侵入者により、一部の引込幹線が切断され、盗難されている。西館全てに電気を供給するには幹線の引き直しが必要である。動力操作盤、電灯分電盤、電灯コンセントは老朽化が見られるものの、整備及び部分更新を行えば使用可能な状態である。照明器具は一部破損機器が有り、老朽化傾向にあるが、整備すれば使用可能な状態である。今後、詳細調査を行った上での改修工事を予定されている。
【4】弱電
テレビ共聴、電話、インターホン、放送設備等が設置されている。テレビ共聴設備は老朽化が見られるが、整備すれば使用可能な状態である。電話・インターホン設備は本館にMDF・PBXが有り、そこから分岐し、供給されている。 西館単独で使用する為には、引込をし直し、MDF・PBXを新設する必要がある。また、インターホンは破損機器が見られ、更新の必要が有る。今後、詳細調査を行った上での改修工事を予定されている。
【5】 中央監視
本館に中央監視盤が設置されている。西館単独で使用する為には、中央監視設備を新設する必要がある。今後、詳細調査を行った上での改修工事を予定されている。
【6】 防災
自動火災報知、非常放送、非常照明、誘導灯、避雷針等が設置されている。
自動火災受信機主盤は本館に設置されており、副盤が西館に設置されている。副盤においては、現在使用を休止している。感知器類は経年に見合った状態である。自動火災報知設備を西館単独で使用する為には、受信機を新設する必要がある。
一般放送兼非常放送アンプが本館に設置されている。スピーカーは経年に見合った状態である。放送設備を西館単独で使用する為には、一般放送兼非常放送アンプを新設する必要がある。
非常照明、誘導灯は破損箇所が多々確認されており、電気が供給されてないので動作確認は出来なかったが、経年数からバッテリーも不良と想定される為、更新の必要がある。避雷針は特に問題は見られない。各機器とも消防設備点検を受け、指摘事項に準じられたい。また、消防設備を新設・更新する際は消防用設備等設計届出書、工事整備対象設備等着工届出書、設置届出書、防火管理者選任届出書等の書類を各官庁等へ届出する必要がある。今後、詳細調査を行った上での改修工事を予定されている。

3.2.2 給排水衛生設備

【1】給水
本館B2F にFRP 製受水槽・揚水ポンプ、西館PHRF にFRP 製高架水槽が設置されており、重力方式にて給水されていた。しかし、本館取り壊しの為、年内を目処に新たに引込を行い、既設高架水槽を利用した直結増圧給水装置を設置予定である旨、インタビューにより確認された。但し、工事期間中の現在は、衛生配管の水張り調査等を行う為、仮設の給水引込を行っている。高架水槽は汚損・繊維の浮きが見られるが、架台を再固定し再利用されている。また、オーバーフロー管は破損したままの状態である。配管内部は約10 年使用してない事から劣化が進行していると推測されるが、水張り調査段階では特に大きな問題はない旨、インタビューにより確認された。今後、機器類の稼動時において、漏水等の発生有無を確認する必要がある。
【2】給湯
ガス焚の真空式温水ヒーター、給湯循環ポンプ、貯湯槽によるセントラル給湯である。しかし、現在は使用を休止している。各機器は経年による劣化が見られる為、全面更新を推奨する。配管内部は約10 年使用してない事から劣化が進行していると推測されるが、水張り調査段階では特に大きな問題はない旨、インタビューにより確認された。今後、機器類の稼動時において、漏水等の発生有無を確認する必要がある。
【3】 排水
汚水・雨水・湧水排水ポンプが設置されている。地上階の汚水は自然流下で、地下階の排水はポンプアップで排水されている。しかし、現在は使用を休止している。各ポンプ類は経年による劣化が推測される為、全面更新を推奨する。配管内部は約10 年使用してない事から劣化が進行していると推測されるが、水張り調査段階では特に大きな問題はない旨、インタビューにより確認された。今後、機器類の稼動時において、漏水等の発生有無を確認する必要がある。
【4】ガス
都市ガスが本館B1F に引込まれている。そこから西館へ分岐供給され、真空式温水ヒーター、吸収式冷温水発生機、蒸気貫流ボイラー、厨房等に利用されていた。しかし、本館取り壊しの為、新たに引込を行い、館内は既設配管を再利用予定である旨、インタビューにより確認された。既設配管再利用にあたっては、大阪ガスにて配管漏洩検査を行い、部分的な補修にて使用可能である調査結果が出ている。
【5】衛生器具
衛生器具、水栓類は一部の器具に破損、作動不良及び汚損が見られるものの、その他器具は特に問題は見られない。破損及び作動不良器具は取替が必要である。
【6】防災
連結送水管、補助散水栓、スプリンクラー、ハロン消火設備が設置されている。補助散水栓函に劣化及び発錆が顕著に見られる。錆落し後、防錆処置を推奨する。連結送水管は水張り調査が行われているものの、耐圧試験が必要である。
スプリンクラーポンプ・消火水槽は本館に設置されている。スプリンクラー配管外装は発錆が顕著に見られる。スプリンクラー配管内部は確認出来なかったが、水を抜いた状態で約10 年使用してない事から、発錆していると推測される為、更新を推奨する。スプリンクラー設備を西館単独で使用する為には、スプリンクラーポンプ・消火水槽を新設する必要がある。ハロン消火機器・ボンベに劣化及び発錆が見られる。経年数よりハロンボンベは補充し直しが必要であるが、ハロン1301 消火剤はオゾン層破壊物質であり、生産が中止されている為、二酸化炭素消火設備への更新を推奨する。また、消防設備を新設・更新する際は消防用設備等設計届出書、工事整備対象設備等着工届出書、設置届出書、防火管理者選任届出書等の書類を各官庁等へ届出する必要がある。今後、詳細調査を行った上での改修工事を予定されている。

3.2.3 空調設備

【1】 空調方式
3Fより上の客室系統は吸収式冷温水発生機を熱源とし、外調機・ファンコイルユニットによるセントラル空調方式である。2F より下は吸収式冷温水発生機を熱源とし、空調機・外調機によるセントラル空調方式と空冷ヒートポンプパッケージによる個別空調方式の併用となっている。また、ファンコイルユニットの配管は2管式となっている。
【2】熱源機器
PH1F に吸収式冷温水発生機、開放式冷却塔、蒸気貫流ボイラー、冷温水ポンプ、冷却水ポンプがPHRF に膨張タンクが設置されている。吸収式冷温水発生機、開放式冷却塔、冷温水ポンプ、冷却水ポンプは屋外に設置されており、発錆が顕著に見られる。屋上設置の配管・バルブ・ラッキング及びダクトにも発錆が顕著に見られる。冷却水配管においては、地震の影響と思われる架台固定部の損傷が確認された。他にも地震の影響が及んでいると推測される。機器・配管の内部は確認出来なかったが、約10 年使用してない事から発錆していると推測される。空調機能を再起する為には、熱源機器の全面更新を推奨する。また、冷温水発生機を更新する際は煤煙発生施設設置届出書等の書類を各官庁等へ届出する必要がある。今後、詳細調査を行った上での改修工事を予定されている。
【3】空調機器
空調機、外調機、ファンコイルユニット、熱交換器ユニット、空冷ヒートポンプパッケージが設置されている。空調機・外調機は外部・内部共に発錆が顕著である。その他機器は内部の確認は出来なかったが、同様に発錆が進行していると推測される。配管バルブ・ラッキング・ダクトについても内部は確認できなかったが、外部に発錆が顕著である。空調機能を再起する為には、空調機器の全面更新を推奨する。今後、詳細調査を行った上での改修工事を予定されている。
【4】換気
送排風機、有圧扇等が設置されている。屋外設置の機器・ダクトは発錆が顕著に見られる。換気機器は約10 年使用してない事から内部に発錆が進行し、動作不能と推測される為、全面更新を推奨する。今後、詳細調査を行った上での改修工事を予定されている。
【5】 排煙
5~12F は排煙窓による自然排煙となっている。PH1F に2 基、3F に1 基、排煙機が設置され、B1F~4F の店舗・ラウンジ等は機械排煙となっている。現在は使用を休止している。排煙機、排煙ダクト、排煙ダンパー等は発錆が顕著に見られる。排煙口・ダンパー等は地震の影響を受け、作動可能かは不明である為、排煙機器は全面更新を推奨する。また排煙設備を更新する際は工事整備対象設備等着工届出書等の書類を各官庁等へ届出する必要がある。今後、詳細調査を行った上での改修工事を予定されている。

3.2.4 昇降機設備
乗用2 基、非常用1 基のエレベーターが設置されている。現在、乗用2 基はメンテナンスをしておらず、使用を休止している。運転再開にあたっては点検・整備・修繕が必要である。非常用1 基はメンテナンス契約が結ばれており、運転可能な状態にある。今後、詳細調査を行った上での改修工事を予定されている。


3.2.5 機械駐車設備
当該設備は設置されていない。